OJTを実施しても、業務の忙しさから新入社員を放置してしまうと、新入社員の勤続意欲や成長意欲を下げて離職につながる可能性があります。 これからOJTを始めようと考えている企業は「実施しても成果が出るのか」が一番気になるところだと思いますが、OJTで成果を出すためには新入社員をOJT担当者だけでなく部署全体でフォローしていく体制作りが必要になります。 そこで本記事では、OJTのやり方や具体的な運用ステップ、失敗例を踏まえ、OJTで新入社員を即戦力化させる方法を解説します。 この記事を読むことでOJTをすぐに始められるだけでなく、成果の出し方まで理解できます。
OJTのやり方・進め方
OJTは大きく4段階のフェーズに分けられます。
OJTのやり方・進め方Show(やってみせる)Tell(説明・解説する)Do(やらせてみる)Check(評価・追加指導を行う)OJTの具体的なやり方・進め方9ステップOJTの目標設定OJTの計画書作成OJTの担当者選出OJT担当者の教育方法と目標のすり合わせ目標達成の目安作成OJTの実施OJTの定期面談と計画の変更・修正目標達成度の計測OJTのフィードバックOJTの実施で成果を高める8つのコツ1.新人社員の特性にあった業務の進め方を教える2.動画やメモ書きなどで業務のやり方(手本)を残しておく3.意図的・計画的・継続的の3つの視点を意識する4.OJTとOff JTを組み合わせる5.難易度の低い業務から徐々に応用力の必要な業務を割り振っていく6.自分で考え行動できるよう業務に対する思考力を身につけさせる7.新入社員の評価・追加指導をこまめに行う8.1on1ミーティングを実施するOJTの失敗例OJTが形骸化している業務が忙しくOJTを実施する時間を取れない十分なフィードバックができていないまとめ
Show(やってみせる)Tell(説明・解説する)Do(やらせてみる)Check(評価・追加指導を行う)
OJTの最終目標は新入社員を即戦力にすることや現場の社員が求める知識やスキルを身につけてもらうことです。 これから紹介する4段階のフェーズでOJTを進めることで、新入社員の即戦力化を実現できるようになります。 また、このフェーズを意識することで新人も担当者もOJTを進めやすくなります。
Show(やってみせる)
仕事をいきなり任せるのではなく、指導担当者が手本をみせることで仕事の全体像や進め方を理解してもらいます。 言葉での説明のみになりがちですが、実際に仕事の進め方を見せた方が上達するスピードも早いです。
Tell(説明・解説する)
手本を見せた後は、業務の意図や目的、背景を解説します。 業務全体の中で新入社員に与えられている仕事の必要性やどの役割を担っているか伝えることで業務に対する意欲が高まります。
Do(やらせてみる)
仕事の手本や業務の意図・目的を解説した後は、新入社員にその仕事をやってもらいます。一人で業務を行うという体験をしてもらうことが大切です。 業務の体験中は横で見守り、何かあってもいつでも助けてもらえるという安心感を与えます。そうすることで新入社員も安心して業務を進められるはずです。
Check(評価・追加指導を行う)
DOでやってもらった業務を確認し、できたこと・できなかったことをフィードバックします。フィードバックは具体的であればあるほど、業務の理解度が早くなります。 DOでできなかった業務については、再度Show → Tell → Do → Checkの循環で業務を教えていきましょう。
OJTの具体的なやり方・進め方9ステップ
OJTの具体的なやり方・進め方の9ステップは以下の通りです。
OJTの目標設定OJTの計画書作成OJTの担当者選出OJT担当者の教育方法と目標のすり合わせ目標達成の目安作成OJTの実施定期面談と計画の変更・修正目標達成度の計測OJTのフィードバック
この9つのステップで進めることで指導の質を向上させられるだけでなく、OJTを滞りなく進められます。これからOJTを始める方はぜひ参考にしてください。
OJTの目標設定
まずはOJTの目標を設定します。 新入社員がOJT終了後にどのような社員になってほしいか、OJTの育成担当者は目標を達成するためにどんな知識・スキルを教えるかを逆算して考えるためにも、目標の設定が必要になります。 新入社員の「OJT後の理想像」については企業・部門・部署の3つの視点で経営陣や部長、グループの責任者に確認をとりながら設定しましょう。 目標達成の期間は達成度合いを図るためにも「内定〜入社」「入社〜3ヶ月」「3か月後~」のように細かい期間で設定するのがオススメです。
OJTの計画書作成
OJTの目標を設定できたら、次にOJTの計画書を作成します。 OJTの目標で設定した人物像に育て上げるために必要な期間・育成ペースを出していきます。 育成ペースについては「OJTの目標設定」で解説した通り、「内定〜入社」「入社〜3ヶ月」「3か月後~」このように期間を設けてOJTの計画を作成すればスケジュールを組みやすくなります。 参考:OJTの実施計画・スケジュールはどう立てれば良い?|カオナビ人事用語集
OJTの担当者選出
OJTの計画書を作成できたら、新入社員の育成・OJTの担当者を選出しましょう。 この時、担当者として選出するのは入社3年〜5年目の知識やスキルが豊富かつ、成長段階である社員を選びましょう。 OJTは新入社員を育成するだけでなく、担当者が成長するチャンスでもあります。 人事部や部長、グループの責任者とOJT担当者の面談を設け、話し合いながら選定していきましょう。
OJT担当者の教育方法と目標のすり合わせ
OJTの担当者を選出したら「OJTとは何か」「OJTの目的」を理解してもらうために、OJTの実施目標・計画・運用方法などのすり合わせを行います。 ここで担当者にOJTの目的を具体的に伝え、理解してもらうことが大切です。
目標達成の目安作成
OJT担当者とのすり合わせが終わった後は、目標の達成度合いを計測するために、達成目安を作成しましょう。 達成目安は習得する予定のスキルと期間を設定するといいでしょう。 営業職を例に挙げると、「1週間以内にトークスクリプトを覚える」「1ヶ月以内にアポを一件取る」など、成長度合いがわかりやすい目安を設定します。 目安を設定することでOJTの進捗度合いを可視化でき、成長が遅れている場合の改善をスムーズに行えます。
OJTの実施
目標達成の目安まで作成できたら、OJT担当者を新入社員の育成担当へ配属し、OJTを開始しましょう。
OJTの定期面談と計画の変更・修正
OJTは定期面談を組み込むとより効果的な成果が出ます。 1ヶ月に1回程度の頻度で1on1ミーティング、もしくは部長やマネージャーを集めて面談を行いましょう。 以下のような質問をし、新入社員の悩みやOJTの進め方についてヒアリングします。
OJTの進捗度合いはどうかOJTの中で困ったこと・改善して欲しいことはないかOJTにおける相談やわからないことを解消できているか
定期面談で新入社員のOJTの進捗状況や困っていること、改善してほしいことをヒアリングします。 ヒアリングした結果を元に目標の修正やOJT計画の軌道修正、フィードバックを行うことで、よりOJTの精度を高められます。
目標達成度の計測
OJTの終了後は目標の達成度合いを計測しましょう。 設定した目標や計画書を元に、実際に習得したスキルや習得にかかった期間などを集計し、達成度合いを確認します。 社員によってOJTの達成度合いが違ってくるため、改善点や課題をまとめ、今後のOJTに役立てましょう。
OJTのフィードバック
目標達成度の計測ができたら、各担当者へのフィードバックを行いましょう。 まずは、OJTの達成度合いに合わせてOJT担当者へのフィードバックを行います。 ここで具体的なフィードバックを行うことで、人材育成スキルの向上につながり、部長やマネージャークラスへのステップアップにつながります。 OJT担当者へのフィードバックが完了後は、新入社員へのフィードバックを行います。 OJT終了後は独り立ちとなるため、自発的に行動できるよう業務に対しての考え方や効率の良い進め方など、今後の業務に役立つフィードバックを行いましょう。 参考:OJTとは?【簡単にわかりやすく】教育、研修、向いてない人|カオナビ人事用語集
OJTの実施で成果を高める8つのコツ
ここからはOJTの4つのフェーズそれぞれで使える成果を高める8つのコツについて解説します。
1.新人社員の特性にあった業務の進め方を教える
仕事のパフォーマンスを高めるためには、新入社員それぞれの特性に合わせて教え方を変えましょう。 たとえば、新入社員の中でも現場にでてガンガン学びたいタイプや、まずは目的や意図を座学で理解した上で現場にでたいタイプなど様々です。 そのことに配慮せずにいきなり現場に出してしまうと、まずは座学で理解したいタイプの新入社員のモチベーションが下がってしまう可能性や成長に遅れが生じる可能性があります。 そのため、どちらか一方のやり方に固定することなく、新人の特性や考え方に合わせて業務の進め方を変えましょう。 まずはコミュニケーションと観察を通して、それぞれの新入社員がどのような特性を持っているか見極めましょう。
2.動画やメモ書きなどで業務のやり方(手本)を残しておく
わからない問題をすぐに解決できるように、業務のやり方を動画やメモ書きなどにして残しておくようにしましょう。 最初にお手本を見せてあげても、業務を進めるにあたってわからない点が出てくることがあります。 業務の途中で手が止まってしまうのを防ぐために、ベストなやり方をメモ書きや動画にして残してあげるのがおすすめです。 いつでも内容を復習できるような状態にしてあげると、スムーズに業務を進めることができます。 例えば、マニュアル作成・共有システム「Teachme Biz(ティーチミー・ビズ)」のようなツールを活用することで、だれでもかんたんにマニュアルの形で手本を残しておくことができます。 Teachme Bizで作成したサンプルマニュアル:Zoomの背景を設定する方法
3.意図的・計画的・継続的の3つの視点を意識する
業務の説明をする際は、以下3つの視点を意識しましょう。
原則➀ 意図的:どのような目的をもってそのトレーニングを行うのかを認識すること。原則➁ 計画的:しっかりとした計画に基づいてトレーニングが行われること。1度で終わってしまうトレーニングではなく、反復的に、また段階的にトレーニングが実行されること。
これら3つのポイントを意識して説明することで、OJTのパフォーマンスを高めることができます。 まず、どのような目的をもって新入社員に指導をしているのか、担当者自身が理解しておく必要があります。 また、OJTで立てた目標から逆算して、いつまでにどのような指導をするべきか計画を立て、反復的、段階的に継続したトレーニングを行うことで成果につながりやすくなります。 「時間をかけて説明をしているのにうまくいかない」という場合は、上記3点が守れていない可能性があるため、全て意識して進めましょう。
4.OJTとOff JTを組み合わせる
OJTの質を高めるためには、OJTとOff JTをうまく組み合わせることがポイントです。 OJTは「現場に出て実際にやってみる」ことを指しますが、Off JT(Off The Job Training)は座学で研修を受けることを指します。 現場レベルの業務を経験することはもちろん大事ですが、仕事の土台となる基礎的な知識や原理をインプットするのにはOff JTが効果的です。 現場に出て全て教えるのではなく、前提条件で必要な知識をインプットしてもらうことで、効率よく業務を進めることができます。
5.難易度の低い業務から徐々に応用力の必要な業務を割り振っていく
実際に仕事をやってもらう際は、ハードルが低い業務からスタートしてもらうようにしましょう。 最初から対応が難しい業務や責任重大な業務をやらせてしまえば、仕事に対するハードルがあがってしまい、モチベーションが下がってしまう可能性があります。 たとえば、クライアントの契約や売上に直接関わるような業務を担当させた際、万が一失敗したときに責任感を感じてしまい、その後のパフォーマンスに影響が出てしまいます。 そのため、失敗しても最小限の影響しか出ないような業務から始めてもらい、徐々に応用力の高い業務を依頼するようにしましょう。
6.自分で考え行動できるよう業務に対する思考力を身につけさせる
業務でつまづいてしまった場合、すぐに答えをいうのではなく、ヒントを与えて自分で考えて行動させるようにしましょう。 将来的な戦力になるためには、社員自身で考えて動けるようにならないといけません。 「自走」できる人材に育て上げるためには、新入社員のうちから自分で考える習慣を付けさせることが重要です。 そのため、悩みを聞かれてもすぐに答えは出さず、解決のヒントだけ与え、それをもとに自分なりの解決策を考えるように促しましょう。
7.新入社員の評価・追加指導をこまめに行う
業務の難易度に関わらず、こまめに評価や追加指導を行うようにしましょう。 簡単な業務の場合でも、誰でも最初のうちは「これでよかったのだろうか」「もっと高いレベルの内容を期待されていたのではないか」と不安に思いがちです。 そのように相手が評価を求めているタイミングを逃さず、良い点、改善すべき点を的確にフィードバックすることで、次からどうすればいいかを確実にインプットしてもらえるようになります。 簡単な業務の場合だけでも放置せずに、しっかりとフィードバックしてあげるようにしましょう。
8.1on1ミーティングを実施する
新入社員の悩みを解決し、モチベーションを向上させるために定期的に1on1ミーティングを実施しましょう。 1on1ミーティングとは、部下の育成やモチベーション向上を目的に行う個人面談です。 OJTとは別で一対一で対話できる機会をもうけることで、普段言いづらかった悩みや相談事を聞けるようになります。 長くても1ヶ月に1回、できれば毎週・隔週で実施するのがおすすめです。 以下記事を参考にして、新入社員のパフォーマンスを高められる1on1を実施しましょう。 参考:部下の会話を引き出す1on1ミーティングのやり方・進め方・質問例 良い1on1・ダメな1on1の違いとミーティングの質を高める12のポイント 【2022年最新版】コミュニケーションを円滑化する1on1ツール24個を徹底比較
OJTの失敗例
ここからはOJTのよくある失敗例について解説します。特に「OJTが形だけの施策になっている場合」には、望んだ結果が得られないため、注意してください。
OJTが形骸化している
OJTという制度だけが先走り、新入社員の継続的な育成をしておらず、制度が形骸化しているケースは失敗に陥りやすいです。 OJTは目的や計画書を作成した上で進めることで継続的なフォロー関係を構築しますが、部署内で育成環境が整っていなかったり、業務の役割や本質を教えずにやり方だけ教えていると、育成対象者の放置につながりOJTが形骸化してしまうのです。 OJTが形骸化すると業務の相談ができず、社内で孤立していく可能性があり、勤続意欲や成長意欲を失い、離職につながる可能性もあるため注意しましょう。 OJTの形骸化を防ぐ方法ためには、OJT担当者への定期的な面談やフォローを行い、OJTの重要性を再認識してもらうことや、計画書や育成方法の修正を行うことが大切です。 参考:OJTの失敗事例3選|陥りやすい課題や効果的なOJT実行のコツ
業務が忙しくOJTを実施する時間を取れない
OJT担当者自体の業務量が多く、新入社員の育成に時間をかけられていないケースも失敗に陥りやすいです。 OJT担当者の業務が忙しく、新入社員に簡単な業務だけ任せたり、わからないことも相談できないと「放置されている」と感じてしまいます。その結果、形骸化のケース同様に新入社員が勤続意欲や成長意欲を失うだけでなく、戦力化にも影響が出ます。 OJTを適切に進めるためには、担当者だけに育成を任せるのではなく、部署全体でサポートすることが大切です。 例えば、OJTを担当している社員の業務を手伝って負担を減らすなど、OJTに集中できる環境を作ることも効果的です。 参考:OJTの失敗事例とは?運用方法や目的、トレーナーを見直そう
十分なフィードバックができていない
OJT担当者が新入社員が行った業務のフィードバックが十分でないケースも失敗に陥りやすいです。 新入社員が行った業務をチェックせず、次々とルーティン作業ばかりやらせていると「やらされている」という感覚が強くなります。 ルーティン作業をこなすだけでは仕事に対しての興味や成長意欲が湧かず、「この仕事は自分に向いていない」と感じ、退職してしまう可能性も十分にありえます。 マニュアルに沿って業務にとりかかることで、新入社員の成長が早まり、業務にかかる時間を短縮できるようになります。そのおかげで浮いた時間は、フィードバックや指導に充てるのが良いでしょう。 マニュアルを渡して放置するのではなく、直接指導が必要な部分に時間を割くようにしてください。
まとめ
この記事では、OJTのやり方について解説しました。 OJTで新入社員を即戦力にするためには、「Show(やってみせる)・Tell(説明・解説する)・ Do(やらせてみる)・Check(評価・追加指導を行う)」の4つのフェーズで進めることが大切です。 OJTはやり方次第では全く成果が出ない可能性があります。特に気をつけてほしいのは「OJTが形だけになってしまうこと」です。 OJTは一見「新入社員の育成プログラム」に見えますが、ルーティン業務をやらせているだけだったり、継続的なフォロー関係が築けていないと業務に対する相談などができず、新入社員が社内で孤立し離職につながる可能性があります。 OJTで成果をあげるためには、OJTの4つのフェーズを意識し、「OJTの具体的なやり方・進め方9ステップ」で紹介した目標設定や計画書作成などの9ステップを実行した上で進めることが大切です。 本記事ではOJTの4つのフェーズごとに使えるコツもまとめているので、OJTのやり方で困った時はこの記事を参考にしてください。